[かのかり妄想] VTuber SUMI-硯とお散歩篇-

私は、桜沢墨。私はもともと、人と話したりするのが苦手だった。私はそんな自分があまり好きではなかった。私はもともと女の子向けの特撮アニメが好きで、「あんな風に輝ける女の子になりたい」、「みんなに元気を与えられるような女性になりたい」と思い、アイドルを目指していた。でも人前で歌ったりするのは怖い。そんな自分を変えようと、レンタル彼女も始めたけれど、なかなか変えることができなかった。でも、レンカノ事務所の同僚 水原千鶴さんと木ノ下和也君の二人との出会いが、私を変えてくれた。千鶴さんはとても強い女性で、私のあこがれの女性だ。「私もあんな風になりたい」と思った。憧れの千鶴さんの紹介で客カレとして来たのが和也君だった。

千鶴さんからの「そんな墨ちゃんを好きって言ってくれるお客さんは 必ずいる」

和也君からの「優しいコが レンカノに向いてないわけねーよ!」

二人のこの言葉に私は救われた。人前で話すのが苦手でも、必要としてくれる人がいる。そんな私は今、VTuber SUMIとして、活動している。

今日は硯と皇居を散歩。その様子を動画配信しようと思う。スマホを腰のあたりに固定し、硯とその周りの動画を撮りながらのお散歩だ。皇居は堀の周りを一回りすると約5kmの距離、1時間20分ほどの散歩だ。ランナーや散歩している人も多い。硯が嬉々としてランナーを追いかけようとするのに耐えながら散歩している。硯がはしゃいでいる。そこへ対面から散歩してきた70代くらいの夫婦が話しかけてきた。ドキッ。

夫婦「かわいいワンちゃんだねぇ」「名前はなんて言うの?」

『ど、ど、ど、どうしよう…』

「硯ちゃんって言うんだ。こんにちは。硯ちゃん」と、その夫婦は硯のネームプレートを見ながら、慌てふためく私を見て察したように話してくれた。硯は「ワンっ」とその夫婦に元気よく返事した。その夫婦が手を振りながら私たちを見送っている姿を動画に収めた。一安心。

と思ったのもつかの間。一難去ってまた一難。対面から散歩してきた二人組が話しかけてきた。

『ど、ど、ど、どうしよう…』

二人組「墨ちゃん、こんにちは。今日は硯のお散歩?」

話しかけてきたのは、どうやら私の知人の様だ。目を合わせられなかったから気づかなかった。ふと顔をあげるとそこにいたのは、私の恩人。水原千鶴さん、もとい一ノ瀬ちづるさんと木ノ下和也君だった。私を知っている人で安心した。千鶴さんは今女優をしている。

「オレたち今度結婚するんだ。親父たちと同じく、ハワイアンズで挙式するんだ。あの場所はオレたち二人の運命の場所だから。あの日、あの時、あの場所で、オレがこのコに想いを伝えなかったら、今の関係にはならなかったかもしれない。」と和也君が照れくさそうに話した。『お、おめ…』私は身振り手振りで一生懸命お祝いを伝えた。千鶴さんは硯とじゃれあいながら硯に話しかけている。左手薬指で輝く指環がまぶしい。「あれ、オレの婆ちゃんから代々引き継がれてる指環なんだ」と和也君が教えてくれた。

千鶴「硯ちゃん、墨ちゃんとお散歩楽しいねぇ。よしよし…。」

硯は「ワンっ」と千鶴さんに元気よく返事した。

千鶴「私たちこれから、おじいちゃんとおばあちゃんの墓前に結婚を報告しに行くところなの。墨ちゃん、硯ちゃん、またね。」

手を振りながら去っていく二人を見送った。お二人とも末永くお幸せに。

 さて、帰宅し、今度は動画編集だ。動画にアバター入れて、音当てはじめた。

『今日は趣向を換えて、歌ではなく、私のペット硯と皇居を散歩する様子をお伝えしたいと思います。スマホを腰のあたりに固定し、硯とその周りの動画を撮りながらのお散歩する様子をお伝えします。皇居は堀の周りを一回りすると約5kmの距離、1時間20分ほどのお散歩コースです。今日は天気が良く、ランナーや散歩している人もたくさんいますね。おっと…、硯が嬉々としてランナーを追いかけようとしています。』

お濠や石垣など、皇居の周りを映しながらナレーション『皇居はもともと江戸城でした。お濠や石垣、櫓、門など当時の遺構が残っています。』

歩みを進めると桜田門辺りが映った。

『ここは桜田門です。桜田門外の変が有名ですね。江戸時代末期に当時の大老井伊直弼が水戸の浪士に撃たれたのはこの辺りでしょうか』

日本史が好きな私は語りに力が入った。先ほどのご夫婦が映った。

『向こうから70代くらいのご夫婦が仲良くお散歩しています。あ、私たちに気づいたようです。…(夫婦の会話とナレーション)…』

今度は千鶴さんと和也君が映った。

『今度は若いカップルが仲良くお散歩しています。私たちに声をかけてきました。こんにちは。…(和也君の会話、千鶴さんが硯とじゃれている様子)…。なんと、このお二人は近々ご結婚されるんですね。おめでとうございます。』

『今、今度挙式すると私に話しかけてくれたお二人は実は私の恩人なんです。私の夢を叶えるきっかけになった人です。私に勇気をくれてありがとう。末永くお幸せに。』

 音をあてた後は動画の編集だ。先ほど話しかけてくれたご夫婦や和也君と千鶴さんの顔を隠したり、適宜アバターを入れたりし、和也君と千鶴さんが見送るところに、『私の恩人。ご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに』の文字を筆で書き、それを画面に映した。本日の動画完成、アップロードした。

 「硯ちゃんかわいい」「硯ちゃんがランナー追いかけてるとこ癒される」「SUMIちゃんの恩人さん、お幸せに!」

硯への好意的なコメントや二人を祝福するコメントが多い。いつものように歌を届けるか、趣向を変えた動画にするか迷っていたが、今回この動画を配信することにして良かったと思う。私は、千鶴さんと和也君の恩人二人に、すごく感謝している。その二人をファンの皆さんと祝福する形の動画になってよかった。

千鶴さんと和也君の二人なら、絶対幸せになるよねっ! おめでとう、私の初恋の人。私はあの人の言葉に救われた。ありがとう、私の初恋。…。胸のあたりがなんだかチクチクと痛み、目から涙が流れてきた。

動画作成完了、ポチッとな。『お腹が空いた。エンゼルフレンチ食べに行こう♪』

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