[かのかり妄想] 何かのご縁??
私は七海麻美。中学3年生。浦島太郎という彼氏がいる。いや、いた。つい先日まで太郎君と付き合っていたのだが、「好きな人ができたから別れて欲しい」と一方的に別れを告げられた。どうやら、私の父が暗躍していたらしい。私は父にキレた。恋愛も将来の夢も、私の自由をすべて奪うつもりなのだろうか。『あぁ。こんな線路からは脱線したい』私は、この家を出ることにした。
街を歩いていると、「お嬢ちゃん、どうしたの?家出? おじさんの家に泊めてあげようか。お金はいらないよ。別の例は貰うけど😏」と、いやらしい目つきで30歳くらいのおじさんが話しかけてきた。私は返答に詰まっていると、おじさんが私を強引に連れて行こうとした。
「やめて!」と発しようとしたが声が出ない。どうしよう。困った。うろたえていると、私と同い年くらいの男の子が話しかけてきた。
「おじさん。そのコ嫌がってますよ。やめてください。無理に連れて行くなら、警察呼びますよ」
おじさんは舌打ちして、去っていった。
「一人でどうしたの?迷子?」とその男の子は言った。
「親とけんかして家出してきた。」と私は返した。
「君くらいの女の子がこんなところを一人で歩てると危ないよ。キミかわいいし。これは、好きとかひとめぼれとか、そういうんじゃなくて…。ゑっ、いや、オレ何言ってんだろ。うわー、オレのバカ。とにかく、家まで送るよ。一人でいるとさっきのおじさんみたいに、誰かに絡まれるかもしれないし。なんなら、一緒に謝るよ。」とその男の子が話した。
「いい。あいつが悪いんだもん。私は悪くない。帰りたくない。」と私は言った。すると、その男の子は何があったが聞いてくれると言ってくれた。私は事情を話した。私に彼氏がいたこと、父がその彼と別れさせたこと、私がカレを好きだったこと…、半泣き状態で語った。
「それは、君のお父さんが悪い。オレもばあちゃんが厳しい人で、家出したくなることあるからわかる。でも、君のことを大切にしたいからこそ、厳しくしてんだと思う。オレのばあちゃんもそうなんだ。厳しいけど優しい。なんとなくだけど、愛情は感じる。君のお父さんもきっと…。あー、ゴメン。オレ、自分で何言ってるかわかんなくなってきた。ほんとは、君のために何かしてあげたいって思ってるんだけど、どうしたらいいかわかねぇや。ごめん。とりあえず、一緒にその辺散歩しながら話しようか。」
私はその男の子と話をしながら、散歩した。その男の子は私のために一生懸命話しかけてくれている。太郎君とは違うタイプだけど、優しくて一生懸命。不器用っぽいしちょっとバカっぽいけど、でも格好いい。なんだか、その男の子のことが好きになってしまいそうな気がした。もしこの男の子のことを好きになっても、父に別れさせられるんだろうな。いっそこの男の子と一緒に家出して、二人で暮らしてしまおうか。
「ねぇ、君。今から私と一緒に家出して、どこかで一緒に暮らさない?」と提案してみた。私は、親に敷かれたレールを脱線したい。このコは私の提案にのってくるだろうか。
「そういうの、やめた方がいいよ。きっと君のお父さんとお母さんもすごく心配してると思う。オレもよくわかんねぇけど、厳しくても、君のことを大切に想っているんだよ。オレん家もそうなんだ。君のお父さんも、不器用で愛情表現が下手なのかもしれないな。不器用なのはオレも人のこと言えないけど…(笑)」
(まぢやばい。私ほんとにこの男の子のことを好きになってしまうかも。お互いのためにも、話するのやめてそろそろ別れたほうがいいかも…。家に帰る気になったとか言って…。)と私は内心思った。
ふと、その男の子が「そういや、名前なんて言うの?オレは…」と言いかけたが、私がそれを遮り「もう会うことないし、そういうのやめよっか」とお互いの名前を聞かないことにした。私のためにも、彼のためにも、お互い名前は知らないほうが良いと思った。
「ここまで、付き合ってくれてありがと。私、家に帰る気になった。家出たこと、親には謝らないし、元カレと別れさせられたことは許してないけど…。それじゃぁ、さよなら。」と別れを告げた。今回の家出のこと、この男の子と出会ったこと、すべて私の記憶からワンクリックでデリートすることにした。『さよなら、優しいけどちょっとバカっぽくて不器用な男の子くん。』と内心で別れを告げ、家に向かった。遠くから、その男の子を呼ぶ声が聞こえる。「おーい、かずちーん。何してんだー」「おう、キベー。オレ今からそっち行くー。」
(終)
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